2014年06月20日号

蝉時雨


 エゾハルゼミの蝉時雨(せみしぐれ)が、深い緑の森に満ちている。文字通り、緑を潤(うるお)すかのように、辺りにひっきりなしに降り注いでいる。その鳴き声はちょうど今の時期、田んぼの中から聞こえてくる、カエルの大合唱と同じような聞こえ方で、時折りそれがセミなのかカエルなのかわからなくなるくらいに似ているのが面白い。気になって近くの水田に行ってみたら、やっぱり蝉時雨に似たカエルの合唱が、田植えが終わったばかりの田んぼを覆(おお)っていた。農村に生まれて、昼も夜もひっきりなしのカエルの合唱の中に育ったものだから、聞いていて何だかほっとしてしまった。


 北海道に来て、6月からセミが鳴くのに驚いた。ハルゼミという種類なのを知らなかった頃は、まだ“春”なのにセミが鳴いているのが不思議な感じだった。育った東北ではジージーゼミもアブラゼミも、カンカンゼミ(ヒグラシ)も夏の盛りからのもので、思い出はセミ捕りに夢中になる夏休みと直結している。


 細い篠竹(しのだけ)の先に、針金の輪っかを付けて、それに軒下のクモの巣を巻き付ける。クモの巣は粘着力があるから、木に止まっているセミにパタッとかぶせればそれで捕れるのだった。この方法は、虫捕り網なんてない(買えない)時代に、子供から子供へと受け継がれた知恵だったと思う。昆虫の標本を作るわけでも、何かの目的があるわけでもない、ただジジーと鳴くセミを捕まえるのだけがうれしくて夢中だった。今思えば、子供というのはそういうものなんだろうとしか言いようがない。理屈を言えば、大人になる土台作りの1つなのかも知れないけれど…。


 もうすぐ、7月入りを前後してエゾハルゼミはパタリと鳴き止む。森に静寂が戻る。1~2週間ほどして今度はエゾゼミの蝉時雨が始まる。ジージーと鳴く夏のセミだ。6月21日は一年中で一番昼が長くて夜が短い二十四節気の「夏至(げし)」。夏の真ん中という。それから約半月後が「小暑」。1ヵ月後が「大暑」。エゾゼミが鳴く頃、夏の盛りを迎える。


ビクター Everio エブリオ GZ-MG330

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