2014年06月20日号

高LDLコレステロール血症


 Nさんは60歳代半ばの女性、14年前から本態性高血圧症で治療を行っている。5月中旬のある朝、診察の始まる時間前に「1時間ほど前から前胸部の締め付けられる」症状を訴えて受診した。症状から虚血性心疾患を疑って心電図検査を行ったところ、以前の心電図とは明らかに違い心筋梗塞を疑う所見…すぐにニトロール錠を舌下してもらい、新札幌循環器病院に連絡、転送した。


 Nさんは、8年ほど前からLDLコレステロールの値が日本動脈学会の基準値である139mg/dlを超えていたが、その後、徐々に上昇して4年前からは160mg/dl前後の値となり、何度かコレステロール低下作用のある薬剤の服用を勧めていた。しかし、Nさんは「生活習慣の改善に努力する」とのことで経過観察を行っていた。


 紹介した病院での緊急心臓カテーテル検査では、左冠状動脈が心臓前面に行く前下降枝と後ろに回り込む回旋枝に枝分かれする前下降枝側で完全閉塞直前の状態…直ちに冠状動脈を物理的に拡張するステントと呼ばれる器具を装着して緊急事態を回避することができた。ステントとは、針金をメッシュ状に折り畳んだ筒で、中に仕込んだ風船を膨らますと拡がり、そのまま形状を維持する器具である。


 前回のコラムでも触れたが、本年4月に改訂された日本人間ドッグ学会の基準によると、LDLコレステロール値が140~179mg/dlの判定は「要経過観察・生活習慣改善」となっている。この基準は、150万人の受診者から『いわゆる健康人』と定義される38万人を抽出し、更にこの集団の1/7=約5万人のデータを統計学的に処理したものだそうだ。だから、この中には高血圧症や糖尿病、脂質異常症で治療中の人、脳卒中や虚血性心疾患の既往がある人は含まれていない。高血圧や動脈硬化など専門学会の基準は、将来的な危険発生を予見してもっと低い値での治療開始を勧めている。


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