2014年09月05日号

植物の喜び


 青い空にわたのような雲がふわりふわりと浮いている。「ああ、いいなあ」と思わず立ち止まって見上げていた。秋風がそよぎ始めて、雲が美しい季節を迎えた。若い頃までは野原に寝転んで、雲が風と戯(たわむ)れるのをいつも見ていた気がする。はるかな空に心が吸い込まれそうになるのだった。風に流れる雲の影が山肌や田畑をゆったりとすべって行く景色も、小さい頃から好きだった。雄大で果てしなく、いつの間にかふっと心が空っぽになっているのに気がついたりした。


 日差しが少し和らいだ感じがして、空に向かって深呼吸している。春と、秋のこれからは日の光が強過ぎず弱過ぎず、光の粒子がきらめいて降り注ぐ。キラキラと日の光の粒を体いっぱいに浴びていると、「生きていてよかった」と思ってしまうくらい気持ちがいい。こうしていると、人間もまた光合成をしているんだなと、いつも思う。日光を浴びて光合成をする植物の喜びがわかる気がしてしまう。


 白にほんのり紫の模様が入ったゲンノショウコや黄色のカタバミや透明な青のツユクサや…道端には夏から秋にかけて咲く、小さな小さな花たちがひそやかに咲いている。そんな花々を見る時はなぜか気持ちがはずんでしまう。野や道端に咲く極小の花々に、心が惹(ひ)かれるようになったのはいつの頃からだったろう。薄桃色のあでやかな花姿のタデの花々も、これから盛りを迎える。


 気がつけば、あかね色に染まって暮れてゆく夕焼けの空が、悲しくなるほどに美しい。9月8日は季節を知らせる二十四節気の「白露」。朝晩が冷え込み、しらつゆが草に宿る頃。そして、中秋の名月「十五夜」。秋真っ盛り…。


矢井田瞳 CD

トラックバックURL:

« 透明は角膜のいのち④防衛機能が破綻した | TOP | 新興感染症 »

[PR]SEO対策済みテンプレート