2014年09月26日号

川柳の醍醐味(だいごみ)


 24になる娘が仕事の休みが取れたからと、友達を連れて久しぶりに帰ってきたのだが…朝「おはようございます」と起きてきた見慣れぬ人に、思わず丁寧にあいさつを返そうとしてよく見たら、素顔の娘だった。一瞬「友達の誰だったかな?」と思ってしまったのだが、目が悪いとはいえ娘の顔を見誤ったのに戸惑ってしまった。で、出勤の道すがら―お絵描き前スッピンの娘に「どなたさま」―なんて一句をひねり出してごまかしたのだった。


 その車の中でラジオを聴いていたら、地下鉄漫談の春日三球さんが……お年寄りがね、自慢してたんですよ、「このスマホは電話もできるんですよ」って……確かそんな内容で、思わずウマイ!と感心してしまった。ちょうど新型スマートフォンの発売で大騒ぎするニュースを聞いた時だったのだが、スマホの画面を見てるだけで目が回りそうになる散歩人にはどうもピンと来ない。最近は同年輩の人なども器用にいじっていて、想像以上にいろいろなことができると聞かされているから、見ていて電話機という気がしなくなっていた。で、一句―このスマホ電話もできると得意顔―。


 下手は下手なりに、何だか川柳づいてきたから、第一生命のサラリーマン川柳(以下「サラ川」)を覗いてみた。《いい夫婦今じゃどうでもいい夫婦》(第26回サラ川)というのがあって、ウマイなあ、なんて感心して、今度は手元の新聞の投稿欄を見てみたら、《切れもせずワシ等の赤いゴムの糸》(大分・田中勇司さん、毎日新聞仲畑流万能川柳)…などと面白い。《オレオレに亭主と知りつつ電話切る》(18回サラ川)《オレオレに爺ちゃん一喝「無礼者!」》(27回サラ川)――。時事川柳ではちょっとおカタいのもある。《支持率の調査は来ない俺んとこ》(新潟県・明間勤さん、朝日川柳)《悪夢みる九条が墨で消される日》(札幌・斎藤もりおさん、どうしん川柳)《政活費往々にして生活費》(東京・高木南風さん、よみうり時事川柳)――。


 我が意を得たり!だったり、言い得て妙!だったり、思わずクスッとさせられたり…川柳の醍醐味(だいごみ)は、意表をつく視点と絶妙の表現と、何より、楽しむ主役がいつの時代も庶民であることなんだと思う。川柳を趣味とする人から教えてもらった一句がある。山形県の農婦がつくったという《洗(あろ)うても洗うてもなお軍手かな》……秋の夕暮れ、野良から帰ってその分厚く荒れた手を洗う、祖母や母の後ろ姿がよみがえって、忘れられない句となっている。


東方神起 CD

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