2015年02月27日号

困った事件


 4キロほどの山道を下った大きな川のほとりの丘の上にある村に小学校や中学校があった。村は秋田杉の集積地にもなっていて、営林署や木材会社、木材加工場などがあり、郵便局も農協も診療所も、何軒もの商店や床屋や鍛冶屋などもあってにぎわっていた。丘の上まで家屋が立ち並び、その頂上に小学校があった。そしてその近くに、この辺ではたった一つの駐在所もあった。


 今から50年ほど前の秋田の一地方の風景なのだが、山間(やまあい)に点在するいくつもの集落を担当するのだから、駐在する警察官も大変だったと思う。当時は親しみを込めてだろう「駐在さん」と呼んでいた気がする。小学校に入ってはじめて「お巡(まわ)りさん」という、何だか上品な呼び方があるのを知った。「拾い物をした時にはお巡りさんに届けましょう」と教えられて間もない頃だったと思う。朝、学校に向かう坂道で風呂敷包みが落ちているのを見つけた。「これは駐在さんに届けなければいけない」と1年生になったばかりの子供は少しばかり気負って駐在所に駆け込んだ。風呂敷の中身は大人用の大きなアルマイトの弁当だった。駐在さんはちょっと困った顔をした。名前も何も聞かれないことに拍子抜けして、少年は思い直したように駐在所からまた駆け出した…。駐在さんも扱いに困っただろうな、あの弁当はどうなったのだろうかと、時々ふっと頭の片隅をよぎることがある。とはいえ、悪事を取り締まる力を持つのはお巡りさんで、大人になってもずっと畏怖の対象だったから、すれ違ったりする時には、今でも何だかドキドキしてしまう。


 群馬県警が2月18日、小学4年生の女児を連れ去ろうとして、未成年者誘拐未遂の疑いで群馬県吉岡町交番に勤務する巡査(24歳)を逮捕したというニュースがあった。報道によると、当日は休みで私服姿。女児の自宅前に自分の車を止め、親戚の車と勘違いして近寄ってきた女児に、女児や女児の父親の名前を言い「パパが交通事故に遭って病院に運ばれた。すぐに来てくれないか」とうそをついて誘い出そうとした。女児は変だと思って拒否、母親に知らせ、県警が発信する地域の安全ニュースにも不審者情報として配信された。後に、地域をパトロールしている巡査だと女児が思い出し、逮捕につながった。巡査は「かわいかったので仲良くなりたかった」と供述し、容疑を認めているという――。


 この事件が、地域社会にいかに大きな衝撃を与えているか、想像に難くない。助けてくれるはずの交番のお巡りさんが逆に“キバ”を向いたのだから…。「子供たちにどう説明しよう」「警察官も信用するなと言わなければならないのか」…ああ、と顔を覆ってしまった人も多いと思う。


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