2015年03月06日号

作話と取り繕い


 Bさんは80歳になる女性、10年前からコレステロールが高くて定期通院。いつも綺麗に化粧し、身だしなみの乱れもない。コレステロールの値も良好で血圧も安定、いつも「うちのワンコちゃんが散歩に付き合ってくれているおかげね」と言っていた。昨年夏に「ワンコちゃんが亡くなったの」と。その後も定期通院をしていたが、あえて犬のことには触れなかった。


 昨年12月の受診時、「犬の散歩に付き合っているの」と自ら切り出し、私は再び犬を飼い始めたと勝手に思っていた。帰り際にも事務の女性たちと犬の散歩のことを話していた。同時期に役所から介護保険主治医意見書が送られ、検査データや診察室での会話から得られた情報を記載して提出した。


 ところが今年2月になって再び意見書記載の再依頼が送付…事務が問い合わせたところ、家族から「介護認定が軽い」と区分変更の依頼があったそうだ。先日、初めて家族が同伴して再来した。一緒に診察室に入ってもらい、Bさんにいくつか質問をした。生年月日は正確に答えたが、他の質問には家族の同意を求めて「振り返る」現象が認められた…認知症?犬の散歩について尋ねると「今も毎日欠かさずに犬と散歩に行っている」とのこと。だが、家族は「昨年夏ころから犬の散歩はしていない」と。


 「物忘れ」は加齢とともに出現してくる。だが、病的なものと誰にでも起こる生理的なものとは異質だ。生理的なものは「ど忘れ」的なものだが、アルツハイマー病では記憶の逸失部を「取り繕う」ために、「作り話」や意図的に話題を逸して埋め合わす。この作話と取り繕いのために、通常の診療では気づかないことが多い。家族に日常生活の状況を尋ねると「家では記憶保持時間は5分ほど、長くても2時間」と。犬の散歩に関する私とBさんの会話を聞いて「作話」に驚いた家族…「次の診察時に詳しい検査をするので同伴を」とお願いした。


家あげ花火

トラックバックURL:

« 勇気と、潔さ | TOP

[PR]SEO対策済みテンプレート