2015年03月13日号

春が来た


 春の日ざしがあたり一面にあふれて、雪がきらきら輝いている。なぜか、ふと、「ああ、眩(まぶ)しい」とひたいに手をかざして微笑んでいる母親の顔が浮かんだ…。


 貧しい農家の暮らしで父親は酒乱だったから、母親が笑ったり微笑んだりする姿に、子供らは本当にほっとしたものだった。母親が泣く姿は物陰から幾度となく見ていて、そのたびに子供心に胸が詰まる思いをしていたから、なお、母の見せる笑顔がうれしくて、心がはずんだ。そんな幼い頃の思いが、少しばかり甘美な香りも織り交ぜた記憶となって残っている。


 昔読んだ本に、春が近づくと気持ちだけでなく、体もふわふわしてきて、何とはなくうきうきしてくるのは……春になると骨盤が開きながら上に上がってくる。ふつう、骨盤は開けば落ちるし、上がれば閉じるのに、春だけは開いて上がる。この変化はある日パーッと花が開くような感じで起こる。腰がフワッと浮いた感じで、何となく浮き浮きとして、骨盤が開いているためにどことなく鷹揚(おうよう)になってくる……とあった。これは若い人ほど顕著で、ニキビが増えたり耳鳴りがしたり、頭痛やめまいや腰痛がしたりと、体の変調もともなうのだという。人間の体は、人が思うより先に、まだまだちゃんと自然の中にいる、とずいぶん納得したのを覚えている。


 雀がチュンチュン飛び回っている。そこここに光が満ちている。眩しくて眩しくて目を開けていられない。…春が来た。


レッドクリフ CD

トラックバックURL:

« 作話と取り繕い | TOP

[PR]SEO対策済みテンプレート