2015年05月01日号

春・・・暦のことば


 早春に、いつの間にかひっそりと草々が芽生えること、あるいはその芽を「下萌(も)え」というそうだ。いい言葉だなあと思う。木々の芽がまだ開く前の春の森は、陽光が木の葉にさえぎられることもなく地面まで降りそそぎ、下萌えの後、林床は一面の緑におおわれる。春の日差しをいっぱいに浴びて、草々はこの時とばかりに花を咲かせ、光合成も行って根や球根に栄養を蓄え、夏までにはもう葉を枯らしてしまうのだという。


 この早春の花々を「スプリング・エフェメラル」というそうで、最近よく耳にするようになった。“エフェメラル”というこの美しい語感の言葉は、英語で「(昆虫・草など)束の間の・はかない」「短命な動植物」などという意味で用いられ、ギリシャ語の「蜉蝣(カゲロウ)」が語源だと何かの本にあった。そんな印象からか「春の妖精」などという情緒的な表現にも巡り合ったりする。――黄色の絹の輝きで花開く福寿草、乙女のようなニリンソウの白い花、少女の趣きの白い花アズマイチゲ、ゆかしくうつむくカタクリ、典雅な紫のエゾエンゴサク、気高いエンレイソウの白と赤紫、小川に春の黄色でまぶしく咲くエゾノリュウキンカ(ヤチブキ)……多くは、昼に花を広げて夜に花を閉じる…。


 「春紅葉(もみじ)」という言葉もある。早春の花々が終わる頃のほんの一時、今度は木の芽吹きが始まって、樹種によって紅や黄、萌黄色の生まれたばかりの若葉の色合いが、まるで紅葉したように山々を淡く彩る、そんな景色を言うのだそうだ。


 平年より10日以上早い4月22日、札幌でも桜の開花宣言が出されて、里は“花時(はなどき)”、山は“木の芽時”…そんなうららかな春が今、真っ盛り。野に山に花々が咲き乱れる爛漫(らんまん)の季節が始まった。緑の風の中に花々と話し、鳥の声を聞き、月と星を見上げて自然と共に生きる時、自然の一部のはずの人間は、きっと本来の心の持ちようを取り戻し、正気に返る…。5月2日の「八十八夜」を過ぎれば、5月6日は「立夏」。暦の上ではもう夏が近い。


浴衣 着付けセット

トラックバックURL:

« 春…下萌えの季節 | TOP | 溶連菌感染症 »

[PR]SEO対策済みテンプレート