2015年07月10日号

残酷な世の中


 時折り寄るバーの日めくりカレンダーはいつも“2日”のままだ。そこには相田みつをの書で「つまづいたっていいじゃないか 人間だもの」と書かれている。マスターは71歳になる。「オレはだらしない生き方をしてきたからね」が口癖だ。札幌郊外の町に店を出してもう45年。この辺ではいつの間にか一番古い店になった。カレンダーの横の柱に川柳の短冊が貼ってある。古くからの常連客の作品だ。「哀愁を 乗せた鉄路が 錆びている」。いい句だなあ、としみじみしながらグラスをなめている。


 飲食店街の景気は悪い。選挙がある時に客足が遠のくのは、どこの店も同じだ。一番の書き入れ時のはずの年末に強行された去年12月の衆議院選、そして春4月の統一地方選挙。これも3月からの稼ぎ時を狙い撃ちにした形になって、不況の中、夏場にかけても飲食店街には閑古鳥が鳴いている。


 消費税が引き上げられたせいもあるだろうけど、地域の店や会社も四苦八苦の状況なのか、新聞の折り込みチラシなどは目に見えて少なくなっていて、景気のいい話は聞かない。景気がいいと言うのは、政府に飼い慣らされてそのPR(発表)をそのまま垂れ流す大手メディアの新聞やテレビで、たしかに大企業と政治家や役人はボーナスなんかも上がって景気がいいのだろうけど、“アベノミクス”とやらはどこの世の戯言(たわごと)なのか、非正規労働がまん延してから若い人も働き盛りの年代の人々も、そして、年金で細々と暮らす年寄りなども、将来設計どころかまるで薄氷を歩むような人生を強いられて、現実の人々の生活はここへ来てまた格段に苦しくなっているように見える。


 年金生活の苦しさに追い詰められた71歳の男性が、新幹線の車内で焼身自殺した事件があった時、巻き添えで亡くなった人もいたから許されることではないけれど「気持ちが痛いほどわかる」とマスターは言った。年寄りだけに限らず、日に日に人々が追い詰められて行く…目の前に、そんな残酷な世の中が広がり始めている。


インテリア・寝具・収納

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