2015年07月17日号

脱水症と熱中症


 Aさんは、高血圧症と軽症糖尿病で定期通院している80歳代前半の男性。老人施設に入居。ある日、家族から「朝から食欲がなく、午後3時頃過ぎにトイレに行こうとして立ち上がれなくなったと呼ばれた」との電話があった。血糖異常や脳血管障害などの疑いもあり、すぐに来院するように伝えた。


 車椅子を用意して待ち構え、直ちに診察室に入ってもらった。私の質問には的確に応答するが、いつもの覇気がない。麻痺の徴候は認めず、手を貸すと立位保持も可能、低血糖も認められない。血圧はいつもよりも少し低めで頻脈。口唇が乾燥し、舌を見るとカラカラに乾燥して脱水症の所見。


 熱中症は「暑熱環境下における身体適応の障害によっておこる状態の総称」と定義され、日射病と違って室内でも発症する。若年者の場合にはスポーツや仕事での発汗過剰による「労作性熱中症」が多いが、高齢者の場合には水分摂取不足に加えて密室状態での発汗障害(無汗)が原因の「非労作性熱中症」が多い。症状として、めまい、意識障害、頭痛や吐き気、高齢者の場合には筋力低下などの麻痺類似症状も見られる。対処法としては、吸湿性と通気性の良い衣服を着用し、高温多湿環境への長時間暴露を避けること、こまめに水分補給をして適切な発汗状態を維持することだ。


 Aさんの場合には、前立腺肥大症による頻尿があって水分摂取を控える傾向が見られ、慢性的な脱水予備状態。更に加齢に伴う温熱刺激に対する感受性低下があり、家族の話では「風に当たると寒いと言って部屋を閉め切り、重ね着をしている」と。Aさんには体液量を増やす点滴を行い、経口補水液を購入して日常的に飲用するように勧めた。点滴を終えるとAさん、颯爽として自力歩行で帰った。発汗している肌に風が当たっても「寒い」と感じて重ね着をする高齢者は珍しくないが、これからの高温多湿の季節、注意が必要だ!


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