2015年08月28日号

アメンボ


 開拓の村に散歩に行くのを楽しみにしている。ニシン漁が盛んだった昔の面影を保存した「漁村群」のかたわらにある池に、アメンボがずいぶんいるのを見つけてからだ。そのアメンボたちに会いに行く…。


 秋田の山奥で育った小さい頃、初夏から初秋にかけての川遊びはかけがえのない楽しみだった。夏が近づいて水が温(ぬる)んでくると、近くの小川に走る。水面に日の光がキラキラ反射して眩(まばゆ)い。小川のひそやかな流れは光の模様となって水底に揺らめいている。流れの少しゆるやかなところに、アメンボがこともなげに川面をスッスッとすべっている。その様子をいつも息をひそめて見つめていた。


 ふと、川遊びに連なるもう一つの情景がよみがえった。夏の昼下がり、小川で遊ぶ子供らが見ていたのは、橙色(だいだいいろ)や濃褐色の透明な大きな羽を優美にひらめかせながら、川蜻蛉(かわとんぼ)が幾百と群れをなしてゆらゆらと川面をたゆたう、神秘的な情景だった。今思えば、まるで夢の中の光景…。


 ところで、アメンボは「水馬」などとも書くのだそうだが、「捕まえると水あめのようなにおいがする」のだという。それが呼び名の語源だと辞書にあった。においなんて嗅いだことがなかったから、そんなことは初めて知ったのだが、困ったことに、今度は水あめのにおいってどんなだったか、思い出せないでいる。


セットコンポ

トラックバックURL:

« 労咳と呼ばれた国民病 | TOP | 強度近視は近視が強いだけじゃない!① »

[PR]SEO対策済みテンプレート