2015年11月27日号

糖尿病性腎症


 Sさんは10年前に糖尿病と高血圧症の継続治療を希望して来院。初診時の検査では糖尿病コントロールは最悪、腎機能にも軽度の低下が見られていた。本人には「糖尿病の治療をしっかりしないと腎臓の働きが悪くなって尿毒症で透析治療になる」と忠告した。


 Sさんは、活動的で世話好きな性格だが病識が薄く、徐々に腎機能が低下、それと逆比例する形で糖尿病コントロールは良くなってきた。腎機能悪化に伴ってインスリンの腎排泄が低下するため見かけ上、糖尿病コントロールが良くなる現象、危険な兆候だ。7年前に中央区の総合病院腎臓内科に紹介状を書いて以後の診療を委託した。


 糖尿病三大合併症=網膜症、腎症、末梢神経障害は罹患期間の長さで徐々に進行。糖尿病コントロールを維持して進行を遅らせることはできるが、阻止するのは困難。生体が高血糖になるとタンパク質修飾のため糖毒性が生じ、末梢の細い血管に硬化性病変が発生して糖尿病性腎症を発症する。糖尿病性網膜症も末梢神経障害も同様のメカニズムで起こる。腎症は尿毒症へ、網膜症は眼底出血から視力障害へ、末梢神経障害は難治性皮膚潰瘍から壊疽へと進展する。


転院したSさんは、栄養指導などで透析治療への移行を阻止。しかし、今年の春ころから食欲不振、無気力、活動量の急激な低下などが出現、一日がかりの通院に本人も付き添う奥様も疲れ、奥様が何度も相談に来院。主治医に伝えて近くの病院への転院希望をするよう言ったが、反応がなく、止む無く主治医に手紙を書いた。その直後、奥様から「(Sさんが)立ち上がれなくなった」との電話、「救急車を要請するように」と伝えたが、搬送された先で進行胃癌と診断、まもなく他界された。内科も臓器別に細分化され、専門領域以外への医師の配慮が希薄になっている。内科医は人間全体を診るという原点を忘れて欲しくない!


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