2015年12月04日号

単純性ヘルペス脳炎


 Nさんは60代後半の男性。勤務先近隣の病院で高血圧症の治療を受けていたが、退職を契機に当クリニックを紹介状持参で受診した。前医からは降圧剤のβ遮断薬とCa拮抗薬を処方されており、同じ薬剤を処方して現在に至っている。血圧のコントロールは良好で、脂質や糖質代謝異常などは認められていない。


 今年10月末の定期受診の際に頭痛や咽頭痛、鼻汁など風邪症状の訴え、咽頭部の発赤も認められ、抗生剤、消炎鎮痛剤などを処方した。翌日に「風邪薬の副作用ではないか?」と来院。診察すると、全身の発疹…先端に小さな水泡を伴う丘疹…薬疹のようには見えず、処方した薬剤はいずれも過去に服用履歴があった。アレルギーなど薬剤の副作用は考えにくいが、抗アレルギー薬を処方した。


 口唇周囲に水泡を伴う発疹が出現する単純性ヘルペス、この原因ウイルスが脳炎を起こすことがある。頭痛や嘔吐など髄膜刺激症状で始まり、幻覚や種々の異常行動が見られ、致命率も極めて高かったが、最近は抗ウイルス薬で完治可能になった。この病気を知ったのは医者になって4年目。精神科病院の当直を頼まれた際に、20代前半の女性が救急車で搬送されてきた。卑猥な言葉を連発し、ドアに突進して叩いたり蹴ったり、私の手に負えないと判断して脳神経外科医に応援を頼んだ。最終診断は単純性ウイルス脳炎。


 Nさんは、最終受診の2日後に頭痛を訴え、壁に向かって突進し、幻覚も伴う症状が出現した。搬送された脳神経外科病院でウイルス性脳炎と診断。確定診断はできなかったようだが、「ヘルペス脳炎の可能性が大」と言われたそうだ。早期の対処と適切な抗ウイルス薬の使用で10日ほどの入院で治癒したとのこと。Nさんの発疹が、カポジ水痘様発疹の可能性が高く、この時点で脳炎発症の予測は無理だが、改めて広い視野で患者さんを診察する必要性を感じた!


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