2016年02月12日号

老々介護、認知症…監督責任と社会


 その事故は、2007年に愛知県大府市のJR東海道線共和駅で発生した。重度の認知症で要介護4だった同市内に住む男性(当時91歳)が1人で外出。駅ホームの端近くの線路で列車にはねられ、死亡した。当時85歳で要介護1だった妻が主に介護をしていたが、男性は妻がまどろんだ隙に外に出たという。横浜に住む長男の妻も介護のために近所に移り住んでいた。この事故でJR東海は遺族に、乗客の振り替え輸送費や復旧のための人件費など約720万円の賠償を求めて裁判になった。


 報道によると、一審・名古屋地裁は、責任能力がない人の賠償責任は「監督義務者」が負うと定める民法714条の規定から、長男が「介護方針を決めていた」ため監督義務者としての賠償責任があると判断し、男性の妻の過失責任も認定して、2人に請求通り約720万円の支払いを命じる。続いて、二審・名古屋高裁は、今度は「20年以上別居していた」と長男の監督責任は認定せず、夫婦には助け合う義務があると定めた民法の規定を根拠に、男性の妻にだけ監督義務があったと判断する一方、JR東海側も安全配慮義務があったとして賠償額を約360万円に減額する判決を出す。双方ともその判決を不服として上告した…。


 事故があれば鉄道会社も大きな損害を受ける。通常、人身事故を起こした当人が生きていれば当人が、死亡すれば遺族が賠償責任を負わなければならないという。また、当人が生きている場合でも、年少者や認知症などで責任能力がないと、監督者である親や身内が責任を追及されることがある。ただ、鉄道会社もすべての事故で損害賠償を求めるわけではなく、当人や遺族の生活状況や心情に配慮して損害賠償を請求しなかったり、また、請求しても相手に資力がなく無駄に終わったり、死亡事故の場合には遺族が相続を放棄して請求できなくなったりするなど、さまざまなケースがあるといわれる。


 最高裁判所は上告を受けて、判決を見直す際に開かれることが多いという上告審口頭弁論を2月2日に開いた。弁論で家族側は監督責任を否定し、「介護する家族に監督責任が問われれば負担は過酷なものになり、認知症患者に関わりを持たない以外に方法がなくなる」、賠償責任も免除されるべきだと訴えたという。最高裁の判決は3月1日に出される予定だ。


 85歳という高齢の配偶者に重い責任を負わせるのか。あるいは、誰も責任を負わなくていいのか…。認知症患者を抱える家族の監督責任について初の法的な判断を示すことになるだけに、介護現場や今後の高齢化社会の在り方などに、さまざまな形で大きな影響を与えそうと注目されている。


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