2016年04月08日号

春の喜び


 子供の頃、雪がとけ出すと、顔を出し始めた地面や草むらの上を、なぜかわざわざ選んで歩いたのを思い出す。土の大地はあくまでも柔らかく、やさしく、けれどもしっかりと子供たちの歩みを受け止めてくれるのだった。それがうれしくて、あっちの水たまりをじゃぶじゃぶ歩いて、こっちの水たまりでは水の流れ道をつくってはたまった水が堰(せき)を切って流れ出すのを飽きもせずに見つめ、柔らかに弾む土を踏みしめてみたり、道端や土手の草むらを歩いてはそのほっくりした感触を愛しんだ。


 山ぎわや土手からは清冽な雪どけ水がほとばしるように流れ出している。草むらにはフキノトウがつぼみを広げ始め、春の日ざしの水色の空には白いちぎれ雲が浮かんで、柔らかにそよぐ風に乗ってとんびがゆったりと舞っている…。もうすぐ道や空地の雪も全部消えて、缶けりだのビー玉だのくぎさしだのケンケンパだのまりつきだの縄跳びゴム跳びだの……冬の遊びも楽しかったけれど外の遊びがあれもこれもいろいろできると思うだけで、胸がふくらんだ。


 冬は、雪遊びを別にしても、お手玉もあったし、おはじきもあった。女の子はよくポケットの中に輪にした毛糸の紐(ひも)を忍ばせていた。あやとりや指ぬき遊びのためで、1人遊びもできるから、はしごやほうきや橋や東京タワー…などと技を覚えて、誰でも夢中になった時期があるのではないか。小さい頃には男の子も遊んでいた気がするし、スタッフに聞いてみたら老若男女みんな経験があったから、今も思った以上にすたれていない気がする。それどころか、東アジア、オーストラリア、太平洋諸島、南北アメリカ、アフリカ、ヨーロッパ、西インド諸島、極北圏など全世界に独自な形で古代から伝わっているとかで、国際あやとり協会などもあるのだそうだ。


 駆け足の“花便り”はもう福島・宮城辺りまで北上しているという(4月2日現在)。土の大地を踏みしめる喜びを、この春はしっかり心に刻んでみたい気がしている。


チュニック

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