2016年11月11日号

ハロウィンの散歩


 身体上の事情があって、日々の歩行が欠かせない。車の危険がない運動公園や遊歩道なんかを、両手にポールを持って転ばないように歩く…。2~3kmも歩けば精一杯で、お散歩程度のもの。とはいえ、風が冷たくなると、外歩きは何ともつらい。ふと思いついたのが札幌駅からススキノまでの地下街だった。札幌駅から大通までの、通称チ・カ・ホと呼ばれる地下歩行空間と、ススキノまでのポールタウンを通して歩けば往復で約3kmくらいか。少しつらいけど散歩道にはちょうどいい。12時過ぎの深夜まで通れるから、仕事が終わってからも歩ける。なんせ、雨雪の心配もいらないし、温度管理もされていて快適だ。


 10月31日も仕事を終えて夜10時ごろ、いそいそと地下街へ。ところがいつもと様子が違う。お化けやらセーラームーンやら囚人服をまとった一団やら、大胆な仮装をした若い娘たちが、もう深夜というのにあっちをウロウロこっちでキャッキャ。あ、ハロウィンの夜か…としばらくしてから気がついた。仮装をして無邪気に騒いでいるのはなぜか女の子ばかり。やっぱり女は怖い。でも、ここまで化(ば)けりゃむしろ気持ちがいい。日常から離れて別人間を演じる「変身願望」は誰にでもある。それを堂々とかなえられる、ハロウィンの人気はそんなところにあるのかも知れない。


 若い頃、働いていたキャバレーの慰安会で、あんたは幹事なんだからとホステスに手足を押さえられ、カツラをかぶせられて口紅を塗られ、女着物を着せられて、それでオネェ言葉で即興の芝居をせえと舞台に引っ張り出された思い出がある。内緒だが…後で化粧した姿を鏡に映して、なかなかきれいじゃないかと、内心ちょっとうっとりした事実…。危険な分かれ道ではあった。


 化けた娘たちはそのまま地下鉄やJR駅の方へも行った。あの姿で電車に乗るんだろうか、暗い夜道を歩くんだろうかなんて、野球帽に黒眼鏡の不気味な格好をした散歩人は、歩きながら妙な心配をしていた。


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