2016年12月02日号

茅葺き囲炉裏の思い出


 戦後、秋田の山奥の小さな村に生まれて育った。生まれた家は、家屋の半分に馬屋(まや)がある茅葺(かやぶ)きの曲り屋で、居間に石縁の大きな囲炉裏があった。薪(たきぎ)を燃やす煙が屋根裏に立ち上り、目にしみるその煙たさがつらかった思い出がある。時には家中が煙にいぶされるのだが、その煙がまた家や食物をいぶして害虫や腐食から守った。


 村に電気が通ったのは生まれる前年のことだったそうだが、幼い頃の記憶にはなぜか電燈の明かりはなく、夜、囲炉裏の火に赤く照らされている家族の顔と姿が、不思議に記憶の奥に残っている。火がある囲炉裏からは寒くて離れられないから、家族はどうしようもなく囲炉裏のまわりにまるくなっているしかない。囲炉裏を囲んでいる家族の、こもるような話し声や時折り上がる笑い声が、子守唄のように柔らかにけだるく身を包む…そのまわりに縄で編んだ大根がずらりと下がっている…。


 大根はとても貴重な野菜で、葉の部分は軒先に干して寒風にさらし、茶色にカラカラになっても水に戻せば汁の実にもなり、長期にわたる保存食材になったし、実の部分は、麹(こうじ)で漬けるちょうどニシン漬けのような鉈(なた)漬けや、タクアンなどの漬け物になる。タクアンにするのに囲炉裏のまわりに干された大根は、囲炉裏の煙でいぶされて自然と燻製化され、名物の「いぶりガッコ」の風味が付いたのではないかと思う。


 ♪おおさむこさむ 山から小僧がおりてきた(地方により「泣いてきた」「飛んできた」などいろいろ)……子供たちは北風に向かって大声で叫びながら遊んだ。もうすぐ雪が積もる…。


ベーグル

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