2016年12月16日号

一杯のカレーライスから


 これでもかとスパイスを利かせた近頃のカレーはちょっと苦手で、小さい頃、母親が作ってくれた小麦粉・カレー粉から炒めて作る「ライスカレー」が妙に懐かしくなる時がある。昔は肉も高かったから、クジラ肉や後からは魚肉ソーセージ、たまにニワトリを潰した時などに鶏肉が入った。浜育ちの人に聞いたら「ヒル貝(フランス料理ではムール貝…?)だったりカマボコが多かった」と言っていた。ちくわのカレーだったりサンマのカレーだったり、地域や家庭で具はさまざま。1人ひとりに「我が家だけのライスカレー」の味があった…。


 まだ道内では上映されていないが、「カレーライスを一から作る」というドキュメンタリー映画が話題になっている。アフリカから南米までの人類拡散の足取り「グレートジャーニー」を南米から人力だけで逆にたどることに成功した、医師で探検家の関野吉晴氏が、武蔵野美大で学生に教える「関野ゼミ」を追ったドキュメンタリーで、米も野菜もスパイスも肉に使うニワトリも一(いち)から育て、塩は海水から取るところから始める…。「モノの原点がどうなっているかを探していくと社会が見えてくる」というのがこのゼミの狙いだという。


 16年ほど前、グレートジャーニーの旅をしていた関野さんが一時帰国した時に、江別で講演をしてくれた折の話を思い出した。――アメリカ大陸の先住民の人々には、富もモノも欲しい人の所ではなく、必要としている人へ流れて行く。モノは土になって、こやしになって、また戻る、循環しているという考え方。だから、自然を壊さない。利用するだけという共通した生き方があって、期待される人間像は「ケチの逆」。競争社会ではなく、苛酷(かこく)な環境の中で、支え合って生きて行く社会だった――。


 何気なく食べている一杯のカレーライスにひそめられた多くの“命”と膨大な労力…その一つひとつを原点からたどる「旅」。人間が生きるということの“原点”を見つめてみる――今がその時なのかもしれない。


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