2017年03月24日号

あたたかな気配り


 春の日ざしがうららかな彼岸入りの朝、大麻東町の商店街にある理美容室に立ち寄った時のこと…。


 お客の相手をしていた店主が、突然ハサミを置いて店の外に駆け出すように出て行った。やがて、「○○ちゃん、ちょっと用事があるから、まあ入って入って…。ここに座って…。いまコーヒー入れるから、飲んでて…」。70代だろうか、どことなくおぼつかない足取りの女性の腕を取って、親しげに店の中に引き入れると、待合いのソファに座らせ、にこにこしながら店の奥に引っ込んだ。すぐさま店のスタッフがコーヒーを持って来る。知った店らしく、女性もコーヒーを飲みながら、やわらかな顔をして座っている。


 4、5分して奥から出て来た店主が、「やあやあ、久しぶりでないかい」などと笑いながら女性にあれこれ話しかけている。少しして、店の外をちらりと見て驚いたように「お、こりゃ○○さんだ」と立ち上がって、入り口のドアを開けながら「○○ちゃんここにいるよ。なんだ一緒だったのかい。仲いいね。入ってコーヒーでも飲んで行ってよ」と、ご亭主らしい、やはり70代ほどの男性を招き入れる。男性は「いや、どうもどうも」と言いながら女性の隣に腰かけ、「いやいやここにいたんだ。いなくなるんだもの、どこ行ったかと思って…」「別にパーマかける気はなかったんだけど…。用事があるって…」。店主が「いやいや、たいした用でもないからいいんだ。まあ、コーヒー飲んで…」。「あっちにもいないし、こっちにもいないし、警察に電話しようと思ってたとこだったよ」。笑いながらそう言うと、男性はよほど安堵したのか、その声が少し涙声になった…。


 1年に1~2回、こんなことがあるのだという。「知らない人でも、歩いている様子を見ていると、認知症の人ならすぐわかるものなんです」。この日はたまたま見知っている人で、認知症を発症して5年くらいになる奥さんだったから、すぐ家族に連絡が取れた。知らない人の場合は、声をかけて休んでてもらったりしながら、警察などに連絡を取って保護してもらう。「(いろいろ聞き出そうとして)せめる感じになったり、言う事を否定したりしたらダメで、警戒させないようにうまく話ししてね…」。


 地域が一体になって取り組んでいかないと…と店主は言う。地域の商店街で長年営む理美容室、ハサミを手に、表を通る人にも、何かあればと気を配り続けている…。


美白 日焼け止め

トラックバックURL:

« 多焦点眼内レンズの話 | TOP

[PR]SEO対策済みテンプレート