2017年04月28日号

自然と「立ち直り」


 水色の空、そよ風に浮かぶ白い雲、春霞(はるがすみ)の向こうに連なる青い山々、淡く沈んで行く薄紅(うすくれない)の夕暮れ、朧(おぼろ)な赤い月影……誰にも同じに春は来る。雪解けは早かったのに、春嵐やら風が強くて寒い日が続いたから、せめてゴールデンウィークには花でも咲いて、のどかでうららかな春らしい日々を過ごしたいものだと、空を見上げてはちょっと弱気なお願いをしている。とはいえ、季節だけは誰にも分けへだてなく巡ってくる。暖かい春がようやくやって来てくれたんだと、そう思ったら、何だかうきうきしてしまう…。


 桜が咲いて、紅と白の梅の花も咲いて、コブシ、スモモの白花、木蓮、ツツジ、あざやかな黄色のレンギョウ…木々の花々が咲き乱れての百花繚乱(りょうらん)の季節…。風が囁(ささや)いて、花々が香って…。野にはもうすぐあたり一面にタンポポの黄色が広がって、薄青の忘れな草(エゾムラサキ)やスミレ、オオイヌノフグリ、コハコベ、踊子草なんかの小さな花々がほつほつと咲き始める。足もとの小さな小さな花々に気がついたのはいつの頃だったろう。地べたにぺったり座り込んで、時には虫メガネなんかも使って覗(のぞ)けば、思いもしない美しさと凛(りん)とした気高さを兼ねそなえた花々が、清楚なたたずまいで花開いている…。


 人間の成長と発達を研究して、今の基礎を築いた故・田中昌人京都大学名誉教授の教えで忘れられないことがある。生まれて6~7ヵ月の乳児の動きの特徴を…泣いてもあやされると笑顔に戻ったり、体を曲げても真っ直ぐに戻して次の行動に移るなど、心身ともに「立ち直り」反応が出る。動きのつど、必ず正面をとらえ、それから次の行動へと動く…というものだ。一度必ず正面を向く、右と左の真ん中の線、いわば正中(せいちゅう)をとらえるというこの動きは、乳児後半期に向かっての飛躍的な発達に重要な意味を持つことになるのだという・


 もしかして、大人になっても心と体の基本的な動きは同じではないのかと、いつも思っている。泣いたり笑ったり、趣味に浸(ひた)ったり…あの手この手で「立ち直り」にあがく…。本来は、昔から自然の中を一足ずつ歩いて、山や木や、花や鳥や雲と話をしながら、「正中」をとらえ、正気を取り戻せたのかもしれない。森と野と海と星と月と、そして風と太陽と…実はそんな中で人は生きているのだから…。


ジャムウ ソープ

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