2017年09月01日号

そばが好きで…


 大晦日、祖母が打った年越しそばを食べるのが子供の頃の習わしだった。打ち粉をまぶしながら、そばを薄く延ばしては切っていた、祖母の姿が淡い記憶となって残っている。職人が誂(あつら)える細切りのきれいなそばなどとは違って、主婦の手になる文字通りの“田舎そば”でちょっと平たいのだが、昔は町の食堂でも駅の立ち食いそばもそれがなじみ深い普通の手打ちそばの形状だった。細切りのきれいな麺が普通に見られるようになったのは、職人芸をまねた機械打ちが出回るようになってからだと思う。…で、祖母が手打ちしたその平たい麺に、鶏の出汁(だし)で作った温かいそばで年を越す…。


 大のそば好きを自認しているが、その原点はこの祖母の年越しそばと、高校の汽車通学で食べた赤い干しえび入りの天ぷらをのっけた駅の立ち食いそばだったように思う。あの干しえびの香ばしいのが好きで好きで…。だから、思う存分につゆを付けてすする方だし、気取った店は敬遠したい方で、三越の向かいの4丁目地下街の「ひのでそば」などという昔からの立ち食いそばの店には、いまだに立ち寄っている。


 そうした好きな店のひとつに手打ちそば「蕎味房」(きょうみぼう)というそば屋さんがある。今は平岡の住宅街(平岡10条1丁目8―32)にあるが、4年ほど前までは江別3番通の消防学校向かいにあった店で繁盛していた。ちょうど今時期の新そばの頃、その香りの良さと味わいに目を見張ったことがあった。「ああ、これはつゆを多くつけたら、せっかくの香りと味が台無しになってしまう」それがはっきりわかる鮮烈な味わいなのだ。本当の、おいしい手打ちそばというものに初めて出会ったような気がして、それ以来、週に一度は通っているのだが、店を切り回している夫婦ともに体調を崩し、9月10日で店を閉じることに決めたという。


 地域の「名店」が、また一つ消えてしまう…(参考に、蕎味房【TEL】895―4768/昼間のみの営業)。


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