2017年10月27日号

里山の困り事


 秋田の田舎の長兄から、ようやく稲刈りが終わったが、今年はいつもの年と様子が違ったという電話が入った。「熊もタヌキも鹿もカモシカもウサギも、みんな米コ食いに田に下りて来て大変だった」のだと言う。あぜ道ぎわの稲穂がこそいで食われてしまう。背の低いタヌキなどは、稲を根元から倒して穂を歯でこそぎ取る賢さだ。山の動物たちが稲穂の味を覚えたのはいつ頃からなのだろうか。今年はみんな山から出て来て畑の野菜はもちろん、米も食う。


 特に熊の数が例年になく多いという。ツキノワグマが稲穂を食べるというのは初めて聞く話だった。その形跡が今年は方々で見られていたところへ、隣り村で食べている姿が目撃され、あちこちの村で罠にもかかった。村々では熊の肉が珍しくもなく出回っているほどだ。「今年は山が不作で、ドングリどころかアケビも山ブドウも全然だめだ。食うものないからみんな下りて来る」と、今度は姉が電話に出て言った…。


 牛や馬の力に頼っていた半世紀前までは、田畑が連なる山ぎわは、飼葉の草刈りを絶やさないから、それが人間の里と山の間の明確な緩衝帯になった。だから、散歩人が子供の頃は、熊どころかタヌキですら出会うことはなかった。今では「道でタヌキに出会っても、堂々としていて逃げもしない」と言う。姉は熊をよく見かける。「仕事している目の前のすぐそこを熊の親子が通り過ぎて行ったりする。突然の出合頭に驚いてかかって来ることはあるんだろうけど、黙っていれば熊の方から身を隠す。大人しい生き物だ」。


 散歩人の田舎の山にはまだ猿はいないが、川(米代川)を越えて白神山地の方に数キロほど行くと猿が群れをなす。その猿どもが稲穂を食いに来て田を荒らす。米を食べるだけでなく、他の動物と違って稲に小便をひっかけて歩くのだという。その悪臭で米がダメになると付近の村々は困っている…と、電話口で兄が憎々しげに言った。人間に近づくほどに手におえない存在になる…何だかそんな感じだ。


イクラ

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