2017年12月01日号

田舎の思い出


 読者から、津軽弁の「さじゃらと」という言葉はどういう意味だろうと聞かれた。伊奈かっぺいさんが、津軽弁がフランス語に似ているといろいろ話のタネにしていたことを最近の散歩道で紹介したのを読んでくれていて、それで聞いてくれたのだった。散歩人が生まれたのは秋田県の県北で、津軽とは近いから言葉も似ているが、「さじゃらと」という言い方は聞いたことがなかったから、インターネットで調べてみたら、津軽語辞典というウェブサイトに「さんじゃらっと」という項目があり、「さらっと、チョット、薄っすらと」という意味で使われると載っていた。散歩人の母語である“秋田県北語”でいえば「さっと」(ほんの少し)という言い方。それがフランス語に似ているかどうかは、おフランスに縁のない散歩人にはわからない…


 そんな話から、ちょっと田舎のことを思い出した。この前、「グレーテルのかまど」というテレビの番組(Eテレ)で、「平塚らいてうのゴマじるこ」というのをやっていて、懐かしくなった。半世紀以上も前、子供の頃に生活が苦しくとも母親がよく作ってくれたのが、この「ゴマじるこ」だった。黒ゴマを擂(す)って、砂糖で甘いゴマの汁に煮ると、黒くつややかに輝いて、その中に白玉だんごを入れて食べる。白玉粉(もち米粉)を耳たぶくらいのかたさにこねて親指と人差し指で真ん中をつぶし、熱湯に入れて浮かび上がって来たのをすくうのが面白くて、よく手伝った。その白玉をゴマの汁にくぐらせるお汁粉なのだが、夏場にはゴマの汁を、砂糖水に変えて白玉を泳がせた。後でこれは江戸時代からあった「冷(ひ)や水売り」の白玉入り冷や水だと本で知った。どちらも本当においしくて、見た目にも美しいものだったから、何かの折に思い出すと今でも喉が鳴る…


 甘味と言えば、年の瀬が近くなると、祖母が小豆をよく煮ていたのを思い出す。ストーブの上でふつふつと煮え立つ小豆の香り。それを漉(こ)してザラメ砂糖で甘みを付け、今度は漉し餡(こしあん)にする。ふつ、ふつ、プチ、プチ…初冬の、ちょっと暖かい小春日和の明るい陽射しが差し込む中で、あんこが煮えるつぶやきのような音とともに、けだるい時がゆるやかに過ぎてゆく、幼い頃のそんな記憶…


 冬至(とうじ)の日になると、秋に採って種を取り軒先で干しておいたカボチャを、小豆ともち米と一緒に煮ておじやのようにしたのを食べた。「ふぐら」と呼んでいた。なぜ、そう呼んだのか、未だにわからない土地の言葉だ。祖母や母や叔母など女たちが目の色を変えていたっけ。不思議なことに、今と同じで、男たちの多くはそんなに喜ばなかったのを覚えている。


ブルーレイ レコーダー

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