2018年04月27日号

春爛漫(らんまん)


 数年前に帰省した時、芽吹きの前のブナやナラの薄茶色の中に、山桜の淡いピンクに混じって白い花のコブシがぽつりぽつりと咲いているのを指さして、年取った母親が、あの白い花が咲くと田んぼを耕す田打ちの作業が始まるから「昔から田打ち桜と呼んだもんだ」と教えてくれた…。今年は4月20日が二十四節気の「穀雨(こくう)」に当たる。田畑をうるおす春雨が多くなる頃で、種もみをまく好期も知らせる春の最後の節気。暦の上ではもうすぐ「立夏」(5月5日)…。


 この近辺の野や山ではそろそろ春の花々が咲き出ている。春の日差しは、木々の葉にさえぎられることもなく地面まで降りそそぐ。林床をおおう一面の緑は、日光をいっぱいに受けて花を咲かせ、光合成を行って根や球根に栄養を蓄え、夏までにはもう葉を枯らす…。この早春の花々を「スプリング・エフェメラル」とも言うそうだ。“はかない”感じを秘めた言葉で、「春の妖精」などというメルヘンチックな表現にも出合ったりする。――黄色の絹の輝きで花開く福寿草、乙女のようなニリンソウの白い花、少女の趣きの白い花アズマイチゲ、ゆかしくうつむくカタクリ、典雅な紫のエゾエンゴサク、気高いエンレイソウの白と赤紫、小川に春の黄色でまぶしく咲くエゾノリュウキンカ(ヤチブキ)……多くは、昼に花を広げて夜に花を閉じる…。


 ほどなくして、今度は樹木が葉を広げる季節を迎える。樹種によって紅や黄、茶、萌黄色の、生まれたばかり幼葉や芽が、淡いパステルカラーでにじんだように、控えめに山を染め上げる“春紅葉(はるもみじ)”…緑に染まる前の早春の森のほんの一瞬のたたずまいを写し取った、そんな言葉も最近よく聞く。


 桜前線のスピードは、赤ちゃんのハイハイと同じくらいの時速1kmほどなんだとか。南から北へ、赤ちゃんがハイハイする速さで北上した桜前線がもうすぐ北国にもたどり着く。さあ、春、爛漫(らんまん)…。妖精たちに会いに、森にも行ってみたい、良い季節…。


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