2018年05月25日号

リラ冷えの春


 日増しに濃くなる緑の中に、タンポポが鮮やかな黄色を敷き詰めるように咲いている。緑と黄のコントラストのさわやかな美しさが、生命の力強さを信じさせてくれる。エゾハルゼミは気温が20度くらいを超すと鳴き始めると聞いたことがあるが、5月半ば、札幌などでは1~2日、最高気温が25度を超える「夏日」があって、野幌森林公園ではエゾハルゼミの初鳴きが聞こえたという。ところが、暖かくなったと思ったら、次の日から冷たい小雨がそぼ降って、肌寒さに負けて事務所のストーブにまた火が入ったりしている。


 この時季になると、若い頃、「花冷え」と書いたら、北海道には「リラ冷え」という言い方がある…と先輩に教えられたことがあったのを思い出す。北海道で桜の花が咲く頃に寒いのは当たり前のことで、一度暖かくなってから“冷え”を感じるほどに寒さが戻るのは、リラ(ライラック)の花が咲く頃。ちょうど本州の「花冷え」の語感を持つ言葉が、北海道では「リラ冷え」だということだった。何だかキラキラきらめく宝物のような言葉に出会った気がして、とても大切な思い出になった。


 街ではライラックまつりの季節を迎え、ほのかな香りが風に運ばれて来たりする。ライラック(リラ)の花言葉は、日本では「思い出」「友情」「謙虚」…。西洋では「誇り」「美」などだそうだ。紫のライラックだけの花言葉もあって、これは日本も西洋も同じ「恋の芽生え」「初恋」だが、これに対して白いライラックは、日本は「青春の喜び」「無邪気」…西洋は「若者の純潔」なんだとか。花言葉が清楚なイメージなのは、花姿のたたずまいから何となくわかる気がする。通常の花びらは4枚だが、5枚になっている花を見つけて黙って飲み込むと、愛する人と永遠に過ごせるという、ロマンチックな言い伝えがあるのだそうだ。


 小雨とはいえ、この雨は山野や田園には「恵みの雨」。このままリラ冷えも収まって暖かくなったら、北国はいよいよ、緑の風が光る百花繚乱(りょうらん)の季節…何だかうきうきして、思いっ切り背伸びしてみたい気分になる。季節だけは分け隔てなく公平に巡ってくる。誰が何と言おうと、誰にも同じに春なのだ…。


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