2018年07月20日号

火星大接近


 根拠はないのだが、あれはやっぱり火星ではなかったかと思う…。


 高校時代、40kmの道のりの「十里強歩」なる、運動オンチ気味の散歩人にはちょっと迷惑な伝統行事があった。高校2年生の秋、確か、真夜中の12時に学校を出発させられた記憶があるが、定かではない。「無理しないで歩いて行くべし」(秋田では「…しよう」を「…すべし」と言う)と言い交し、仲のいい友人数名と歩き始めたのだった。


 この年頃になれば、「俺は俺」「お前はお前」と、個人に敬意を払って尊重する…という意識が頭をもたげ、自分の考えで行動することが大人だという思いが強くなる(子供じみたいじめなどは幼稚な行為として軽蔑されたと思う)。だから、生徒らは、走るものあり、三々五々歩く者あり、その混合ありという思い思いの考えで校門をスタートした。秋田県北部の能代平野に連なる山を越え野を越え、途中の村々では夜中というのに、握り飯やウリやスイカや、トウキビや枝豆や…村人たちが台の上に食べ物と飲み物を山盛りにして応援してくれる。それをリュックサックに詰めて走る“剛の者”もいて…それがまた、やんやの喝さいを浴びるのだった。十里40kmを3時間を切って走り抜くのが何人もいた。ところが散歩人は朝6時過ぎになって足がうちわになったような感覚のヨタヨタ歩きでようやく“歩き”抜き、最後尾の落伍者を拾うバスに追いつかれなかったことだけが救いになったのだった。


 …で、その道中よく覚えているのは、夜中の空に浮かぶ赤い大きな「星」だった。強度の近眼の散歩人には、空に裸電球が光っているように見えるほど大きく感じた。「あれ、何だべが…」。誰か教えてくれたのかも知れないが、思い出せない。ところが、この夏の火星大接近の話題を調べていて、ちょうどこの「十里強歩」のあった1971年夏に大接近が起きていることがわかって、「あっ」と思った。あれは、火星だったのかも知れない…。


 今年2018年は、地球より太陽の外側をまわるお隣りの惑星「火星」が、15~17年に1度、地球に大接近する年なのだという。いちばん近づく地球最接近の日が7月31日。その頃には、特徴的な赤い色の、マイナス2・8等級にもなる火星が明るく輝くんだとか。7月も8月も夜8時ごろには南東に昇って、夜中11時~1時ごろには南の空に見える……という。夏から秋にかけて街中でも簡単に見つけられるほどになる。


 ああ、あの星に会える…。


のだめ CD

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