2018年08月31日号

ヒルガオの呪文


 まるで縄文時代から毎年咲き続けてきたような、そんな素朴な懐かしさがある。うす桃色のヒルガオ(昼顔)の花が好きで、道端の藪(やぶ)の中に、飾り気のないひかえめな姿の花が開くのを、毎年夏になると心待ちにしている。今年は8月に入っても姿が見えないからちょっと心配したが、立秋を過ぎたあたりからしっかり咲き出してくれた。俳句の世界では夏の花だが、初秋の青い空にもよく似合う…。


 小さい頃、学校帰りの道端に、ヒルガオの良く咲く草むらがあった。その花に口を寄せて「ゴーマ、ゴマ、ゴマ」と呪文を唱える。すると、花の中からゴマの実よりも小さな黒い虫が2匹、3匹と這(は)い出して来るのである。ただそれだけのことなのだが、それが楽しくて小さな子は大きな子からその呪文を教えられてヒルガオの花を見つけるたびに遊んで、また下の子らにその呪文を伝えた。平安なのか室町なのか、江戸か明治か、それとも縄文の時代か…いつの頃からの遊びなのかはわからないけれども、そうして野辺の遊びは伝えられて来た。


 近くに誰もいないのを確認して…花に口を寄せ「ゴーマ、ゴマ、ゴマ」と呪文を唱えてみる。出て来た。ゴマ粒のようなのが1匹、慌ててちょこちょこちょこと這い出して来た。それが無性にうれしくて「お前、元気だったか?」と声をかける。生きていた…お前も…。


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