野幌の純喫茶ファロ 西東京の老舗喫茶で使用什器に宿る歴史引き継ぐ

 昨年12月にオープンした江別市野幌町36―12の喫茶店「街の灯台 喫茶ファロ」が、地元住民の憩いの場として親しまれている。
 8年前に北海道へ移住した奈良県出身の大浦慎司さん、蘭さん夫妻が営む。店内のアンティークなイスやテーブルは、西東京市にあった老舗喫茶店「珈琲館くすの樹」(昨年4月に閉店)で使用していたものを引き継いだ。近所にはスタジオジブリがあり、世界的アニメーション監督の宮崎駿さんも同店の常連だった。テレビドラマ「相棒」のロケ撮影が行われたこともある。
 色褪せたレザーの座面に、リベットが打ち込まれた木製イスは、19世紀の欧州を舞台にした宮崎作品の世界にいるよう。夫婦自ら、モスグリーンにペイントした壁は、映画「キングスマン」に登場する高級テーラーの内装をイメージした。
 浅煎から深煎まで選べるコーヒーは、一人ひとりサイフォンごと提供している。一般的な店と比べて約1・5倍の分量とたっぷり。サイフォンから少しずつコーヒーを注ぎ、1時間、2時間とそれぞれの時間を過ごす常連客も多い。試験前には、地元の大学生がここで勉強する姿も見られる。
 都市部と農村が共存する江別が気に入り、ここで店を開くことを決めたという大浦さん夫妻。「誰もがゆっくり自分の時間を過ごせる空間を提供したい」と語る。
 このテーブルとイスがあった場所で、天空の冒険活劇や見習い魔女の物語が紡がれたのかもしれない。