散歩道 8月2日号掲載

▼吉本興業グループは――東西の多くの人気芸人を輩出し、巨人軍の設立者にもなって草創期のプロ野球界を支え、戦後は日本プロレス協会を立ち上げ力道山をスターにするとともに、近年はスポーツ選手のマネジメントも数多く手がける一方、東京の落語家団体、落語芸術協会の創設者でもあるという歴史を持つ、芸能プロダクションを中心とした業界最大手の複合企業。「お笑いの総合商社」「日本最大の芸能プロ」、そして今や「吉本なしでは、番組が作れない」とまで言われる――などと、インターネット事典の解説にはあった▼一部の芸人から始まったスキャンダルの“よしもとネタ”が、ここぞとばかりに連日テレビのワイドショーを独占している。“身内ネタ”で番組も作りやすいし、“お笑い”でうやむやにできることがいろいろあるのかもしれない…。とはいえ、世の中伝えなければならないニュースも多々あっただろうに、ワイドショーで取り上げられるのは韓国問題や京都アニメーション放火事件、そして“よしもとネタ”に集中していて、チャンネルを変えても同じような内容…。何だか番組作りが変に制約されてでもいるようで、ちょっと首を傾げている▼その吉本興業には(表立って離反するものなど都合の悪い芸人に)徹底して仕事を回さないよう芸能界に働き掛ける(いわゆる「干す」)力がある…という。同じように、「干す」力はこの何年か、メディアや言論界(例えば評論家など)だけでなく、公務員や大学の研究者まで隅々に及び“臭いものに蓋(ふた)”をする力を強めて来た。その結果、支配者にとって都合の悪い情報は少なくなり、活動は委縮しつつある。世の中が息苦しくなり始めているかもしれない…。