| 診察室から2020年3月13日号診察室から 抗生物質が効きにくい、薬剤耐性菌が増加しています。 抗生物質の使い過ぎが、薬剤耐性菌を増やす一因と考えられており、不必要な抗生物質の使用を控えることが重要です。 ■カゼに抗生物質は効くの? カゼとは、「かぜ症候群」という、病原性微生物の感染による、上気道の急性炎症のことです。病因の80~90%はウイルスによるとされています。 一般的にカゼは、狭義の「上気道の急性炎症」だけではなく、気管支炎や亜急性炎症まで含めた、様々な意味で用いられることがあります。胃腸炎もお腹のカゼと言われたりします。 カゼに抗生物質が有効かを議論するには、まず定義をはっきりさせる必要があります。 ■ウイルスによる上気道炎には抗生物質は効きません 抗生物質は、細菌の細胞壁や蛋白の合成を阻害するなどして、効果を発揮します。細菌とウイルスは構造が異なるため、ウイルスには抗生物質は作用しません。すなわち、狭義のかぜ症候群の多くを占める、ウイルス性の急性上気道炎には、抗生物質は無効です。 ■急性鼻副鼻腔炎、急性咽頭炎、急性気管支炎では抗生物質が有効なことがあります 中等症以上の急性鼻副鼻腔炎や、急性咽頭炎で溶連菌が原因となっている場合は、抗生物質投与検討が推奨されており、急性気管支炎の一部にも適応があります。病態、重症度を見極めたうえで使用すれば、抗生物質が有効です。 ■感染症はあなどれない ウイルス性のカゼには抗生物質は処方しない、気管支炎などでも抗生物質の使用は極力控えるのが原則ですが、高齢者や、持病があり体力や免疫力が落ちている方にとっては、肺炎などの重症感染症は命に係わります。高齢者の死因に肺炎は多く、慎重な対応が必要と思われます。 札幌藤島クリニック/厚別北4条4丁目1―8【TEL】801―7707。