商店街の軒先で古書を並べて販売する「大麻銀座商店街ブックストリート」が、先月で通算50回の節目を迎えた。2015年からイベントを企画・運営する「一般社団法人・北海道ブックシェアリング」の荒井宏明代表に、これまでの活動を振り返ってもらった。
―北海道ブックシェアリング立ち上げのきっかけは。
私の身近な生活圏で、本が足りないという声を聞いたのが始まりです。読み終えた本の寄付を募り、それを児童会館や病院の待合室などパブリックな場所に無償でお届けする活動を個人で始めました。その活動が新聞で紹介され、全道から問い合わせが来るようになったのです。そこで、初めて北海道の、特に地方都市の本事情が深刻な問題であることを知りました。同じ問題意識を持つ、教育や図書関係者が集まり、誰でも豊かな読書機会が得られる環境を目指し、2008年に会を発足しました。
―これまでの活動実績を教えてください。
書店のない道内自治体に移動販売車で訪れる「無書店自治体を走る本屋さん」や、北海道の全小中学校の学校図書館の現状調査を行いました。講演や勉強会を通じて、子どもが本と出会える環境づくりの啓蒙活動にも取り組んでいます。東日本大震災では、被災地の読書環境の調査を行い、宮城と岩手に復興支援図書センターや仮設図書館を設置しました。大麻商店街での古書販売イベントは、商店街関係者から「本による地域おこし」を提案され、商店街との協同事業としてスタートしました。50回も続けてこられたのは、地域の皆さんとボランティアの支えのおかげ。「本」の魅力と可能性を私自身、あらためて感じています。
―学校図書館を支援する拠点づくりも始めましたね。
4月15日に大麻商店街内に「学校図書館づくりを支えるセンター」を開設しました。民間では全国でも初めての事例です。出版取次会社などの協力を得て、小中学校の学校図書館向けの見本図書約3000冊を展示し、学校図書館の利用促進に向けた提案も行います。児童生徒が「自ら答えを出す力」を養うには、学校図書館の活用が欠かせません。保育・幼児教育を学ぶ大学生など、広く学校図書館に関わる人たちが情報共有し交流できる場にしたい。
―この10年で北海道の読書環境は変わりましたか。
小規模自治体が多い北海道は、その半数以上に書店や図書館がない状態が続いています。図書更新ができずに、昭和30年~40年代の百科事典や図鑑、統計、地図帳、書籍などが置いたままになっている自治体も少なくありません。小中学校の学校司書の配置状況は全国ワースト2位です。私たちの活動がこれらの改善にどう貢献できるのか、手探りの部分もあり、まだまだゴールは見えません。ですが、未来を担う子どもたちが本を通じ学び、心を育む機会が奪われている現状を見過ごすことはできません。できることを一つずつ、積み重ねて継続していくのが大切だと思っています。
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次回の「ブックストリート」は4月25日(土)午前10時~午後4時、江別市大麻銀座商店街(大麻東町13丁目)で開かれる。本の寄贈、寄付、ボランティアスタッフも随時募集中。
問/北海道ブックシェアリング【TEL】011―378―4195。