シカ笛研究の第一人者 枡谷 隆男 氏に聞く リコーダーで社会や自然との関係知って

 テーマ展では、同博物館収蔵の資料に加えて、高校教諭を長く務め、現在は札幌大谷大学、北翔大学ほかで非常勤講師としても活躍するシカ笛研究の第一人者で、リコーダーを通じた教育を推進してきた枡谷氏が所有する「吹き物」を中心とした楽器なども紹介している。枡谷氏は、多くの人々が学校の音楽教育で触れるリコーダーで「楽器と社会や自然との関係も含めて伝えられれば」と話す。
 「団塊の世代より下の人たちは学校で必ず習っている。国民楽器だと思っている」と枡谷氏が言うリコーダー。学校教育の中で用いられるのはプラスチック製の物が大半だが、本来はピアノなどと同様に年に1度チューニングが必要な木製の繊細な楽器。その「みんな知っているのに、あまりにも知らない楽器」に焦点を当てた。
 呼び方は各国で違う。ドイツでは「ブロックフレーテ(栓をしている笛)」、フランスでは「フリュート・ア・ベック(くちばしの付いた笛)」、日本では「縦笛」、イタリアでは「フラウト・ドルチェ(愛らしい音がする笛)」。物の構造、見た目、演奏の方法、音などから名付けられており、その国の人たちが何にポイントを置いているか、文化の違いも分かるという。また、木製楽器は、湿度などの関係から「その土地で育った木を素材とした物が一番良い」ともする。
 打楽器奏者の土取利行氏の演奏などから西洋音楽以外にも興味を持ち、萱野茂氏との出会いからシカ笛に触れた。バイクで全国をめぐり笛について取材・考察した連載「笛を求めて~音楽の源流を探る旅」は音楽之友社が発行する「教育音楽 中学・高校版」では2000年1月~2002年9月に掲載された。
 この中で「いわゆる笛の仲間の原型は動物の声の模倣」と気付いた。「仮説だが…」と前置きした上で語る。「笛のような道具を作ることで、人間は大きな動物などを獲ることができた。そこからダンスや歌なども出てくる。狩りの前後には、精霊に必ず儀礼する。その中で動物の鳴き声やしぐさが音楽やダンスの中に取り入れられている。楽器と音楽の起源では」と想像している。