不思議がいっぱい!水の中の生き物たちの「口」と「歯」 魚って虫歯にならないの? サンピアザ水族館に聞く

 おいしく食べて、健康で長生きをするために欠くことのできない「歯」。水中に住む、生き物たちにとってもエサを取ったり、食べたりする「歯」はとても大切。でも、「魚の歯ってどうなっているの?」、「歯磨きしないけど、魚って虫歯にならないの?」…。海や川など水の中に住む、魚やその仲間たちの口と歯の不思議について、サンピアザ水族館に教えてもらった。
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 皆さんにもある口と歯、魚たちにももちろんありますが、大きな口であったり、小さな口であったり、鋭い歯をもつ魚もいれば、一見歯がない魚がいたりと、種類によってその形や役割は様々です。
 例えばピラニアは、硬くて鋭くとがった「ナイフ」のような歯で、獲物の肉や骨を食いちぎり、コイは大好物のタニシなどの巻貝の殻を砕くため、「すり鉢」のような歯を持っています。
 魚の口の構造
 魚には、口に顎(あご)をもつものともたないものがいます。原始的な特徴をもつヤツメウナギやヌタウナギの仲間は口に顎がありません。ヤツメウナギの仲間は吸盤状、ヌタウナギの仲間は裂けたような口をしていて、角質歯(かくしつし)という表皮が硬くなってできた歯をもちます。
 一方、多くの魚たちは口に顎があり、上顎(じょうがく)と下顎(かがく)、上下の顎を使って口をパクパクと開け閉めすることができます。顎をもつことで、口を大きく開けることができたり、ものを噛むことができたりと、エサを食べるときなどに役立つ様々な利点があります。
 魚の歯の種類
 私たちヒトの口には、食べ物を噛み切る前歯(切歯=せっし)やすりつぶすための奥歯(臼歯=きゅうし)、鋭く尖った犬歯(けんし)がありますが、魚の歯はどうでしょうか。硬骨魚類の多くは、顎に円錐形の歯(円錐歯=えんすいし)をもちますが、エサの種類や捕らえ方の違いから、種類によって様々な形状の歯をもちます。いくつか例を挙げると、待ち伏せをして獲物を捕らえる肉食性のウツボは、大きな円錐歯をもちますが、ウニや貝類、甲殻類などかたい殻をもつ生きものを噛み砕いて食べるイシダイは、くちばし状の頑丈な臼歯をもちます。
 また、魚は顎以外の場所に歯をもつことがあります。有名なものでは、口の奥にある咽頭歯(いんとうし)という歯で、ベラやブダイの仲間など、かたいものをエサとする魚や、顎に歯のないコイの仲間では、エサを潰して食べるためにとてもよく発達しています。
 魚の歯のあれこれ
 ●何度も生えかわるサメの歯
 サメの歯はヒトの歯とは違い、何度も生えかわるというふしぎな特徴があります。サメの顎には何列もの歯が並んでいて、その中でも歯として機能しているは口の外側に近い2~3列と言われています。後ろに並ぶ歯は前の歯が欠けたり、抜け落ちたりしたときの予備で、前の歯がボロボロになるとその列ごと抜け落ち、後ろの歯がベルトコンベアーのように前へと出てきます。そのため、サメはいつも万全の状態でエサを捕らえて食べることができます。
 ●魚は虫歯にならない?
 みなさんは虫歯にならないために食事の後に歯を磨きますが、魚は歯を磨かなくても虫歯になることはないと言われています。虫歯の原因は、お砂糖やデンプンなどの糖質を口の中の細菌が酸に変えて歯を溶かすためとされています。魚を含めた野生の生きものの多くは、そのようなものをエサとして食べることはないため、虫歯はできないと考えられています。
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 例外も多いが、口が上向きの魚は、待ち伏せして小魚などの生きものを捕らえて食べるものが多く、口が下向きの魚は、水底(すいてい)にすむ貝などの生きものを食べるものが多くみられる。このほか、口の大きな魚は、魚を捕らえて食べる魚食性のものが多く、反対に口の小さな魚は、プランクトンなどの小さな生きものを食べるものが多くいるという。また、口を使って子育てをする変わった口の使い方をするものもいる。
 新型コロナウイルス感染症の影響で、長い間、臨時休館していたサンピアザ水族館は、6月1日から再開された。実際に水族館に足を運んで、魚たちの「歯」や「口」に注目して、じっくり観察してみては?