2020年1月31日号掲載《最終回》 戦後、スター歌手・女優として脚光を浴びながらも、芸能活動から身を引き、日本初の肢体不自由児養護施設「ねむの木学園」を設立

戦後、スター歌手・女優として脚光を浴びながらも、芸能活動から身を引き、日本初の肢体不自由児養護施設「ねむの木学園」を設立(1968年)して園長をつとめている宮城まり子さん(1927年東京生まれ)が92歳の時のインタビュー記事が新聞に載ったことがある。裕福だったのが、幼くして父親が事業に失敗し、母親は病死…著書「まり子の社会見学」という本から子供の頃のつらい記憶をつづった一部分を紹介して…▼宮城さんが小学1年の時、お手伝いさんに童話の本を読んでもらった時のエピソード。「雲雀(ひばり)」を「くもすずめ」と読み間違えたことをバカにして「きらい、帰って」と責めてしまう。今でも雲雀という字を見るたびにお手伝いさんのことが、すっと横切る…という。記者がその部分を朗読すると、宮城さんは涙をこぼした▼――〈「今でも見る『くもすずめ』の夢。『帰って』なんて思ってもいないのに、私ってそういうきついことをビビッと言っちゃうところがあるの。今もどうしているかなって思う」〉。人を傷つけてしまったり、自分が傷つけられたり……。宮城さんが繰り返し口にしてきた「やさしくね、やさしくね、やさしいことはつよいのよ」という言葉は、こうした幼いころの苦い経験と悲しみから生まれたもののように思える――(毎日新聞2019年7月18日「特集ワイド」より)▼人から見ればほんの些細(ささい)な「良心の呵責(かしゃく)」に90歳を過ぎても苦しむ宮城まり子さんという人のやさしさをつくづく思った…▼人には決してやってはいけないこと…「人道」がある。人を殺したり、あるいは人を不幸にする「嘘」を吐(つ)くこともその一つだ。「ウソ」という下卑(げび)た言葉が首相以下それを取り巻く官僚にまではびこり続けている安倍政権。笑ってはいけないのだが……その主人公の安倍晋三さんが政権初期、当時まだ民主党幹事長だった細野豪志さんのフェイスブックに「民主党は息を吐く様にうそをつくとの批評が聞こえて来そう」(2013年6月16日)と書き込んだニュースがあった。そんな政治家や官僚に「良心の呵責」なんて言葉が通用するのだろうか。世の中が乱れて行くのを感じる。今は昔…「政治は最高の道徳である」(故福田赳夫元首相)という言葉もあったらしい…。

 散歩道最終回のご挨拶 散歩人は身体的事情により引退やむなきに至りました。ながくご愛読くださいましたこと、ありがたく深謝いたします。老兵は消え去るのみ…ですが、今後とも「まんまる新聞」をよろしくお願いいたします。
散歩人…伊藤博和拝