8月も下旬に入って新涼の季節。暑い日が続いた盆前とは一転してちょっと雨がちだったけれど、晴れ間に吹く秋の風が気持ちいい。江別の農協に立ち寄ったら、入り口に並べたプランターの前にしゃがみ込んで、事務員さんが一心不乱に花の手入れをしている。その姿が秋の日差しに清々しい。「こんにちは」と声をかけたら「ご苦労様です」とにっこり微笑んでくれて、それだけで何だか幸せな気分になってしまった▼プランターには赤いサルビアの花や黄色の小菊、薄ピンクのコスモスなんかが咲いていて、やっぱり「秋だなあ」の風情。サルビアはブラジル原産で明治中ごろに日本に輸入され、緋衣草(ヒゴロモソウ)という和名もあるんだとか。小さい頃、手当たり次第に真ん中の花筒を引っこ抜いては甘い蜜を吸ったのを思い出した…▼秋の虫が集(すだ)く草むらではエンマコオロギがリリリ…とまだ元気な声、キリギリスがギーッチョンと拍子をとって、そのバックで間断なくルルルルル…と邯鄲(カンタン)が鳴き続けて、日に日ににぎやかになって来た。そんな秋の虫の話をしていたら、何を思ったかスタッフが突然、「ヘップリ虫って知ってます?」「カメムシのことそう呼んだ記憶あるんですけど…」。悪臭を放つから「ヘコキ虫」なんても呼ばれ、稲の養分を吸う害虫として忌み嫌われるカメムシのことを、ムシから連想して思い出したらしい▼そういえば、散歩人が生まれ育った秋田県北部では「アネコムシ」と呼んでいた。家のあちこちにいて大変なのだ。アネコは若い娘や、若い嫁さんのことをいう言葉で、おならを我慢し切れなくなって思わず出てしまう、そんな若々しい姿を笑い話にした昔話が各地に伝わっていて、そういう情景にひっかけたものだろうし、カメムシの甲の模様が手拭いの「あねさんかぶり」にちょっと似ている…そんなこともこの「アネコムシ」と呼ばれた方言の由来にはあると、勝手に推測している。
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