満91歳のボケじじいの私と満84歳のボケばばあの女房とはこの頃毎日競争でトンチンカンをやり合っている私が片足に2枚かさねてはいたままもう片足の靴下が見つからないと騒ぐと彼女は米も入れていない炊飯器にスイッチ入れてごはんですようと私をよぶおかげでさくばくたる老夫婦の暮らしに笑いはたえずこれぞ天の恵みと図にのって二人ははしゃぎ(以下略)……1909(明治42)年11月16日山口県生まれで、5年前に105歳で亡くなった、まど・みちおさんの「トンチンカン夫婦」という詩。お爺さんとお婆さんが日だまりでポカポカするような、そんなあたたかい詩に出会ったのがうれしくて、前に散歩道で紹介したことがあった▼…で、こんなトンチンカンは、もしかして年に関係なく、我が身を振り返れば実はいっぱいある。きっとナイショにしているだけで、みんな心当たりがあるんじゃないか。社内で聞いてみたら…案の定、出てくるわ出てくるわ…「ふきんがないなーと思ったら冷蔵庫に入っていた」(なぜ冷蔵庫にふきんを入れたのか、経緯は不明…)、「朝、鍵と財布が無いと大騒ぎしていたら、冷蔵庫から出て来た。前の日の帰り道、コンビニでジュースなどを買ったビニール袋に財布を入れ、自宅のドアを開けた時に今度は鍵をビニール袋に入れ、そのまま袋ごと冷蔵庫に入れたみたい」(ほかに1人同じような経験)、「オノ・ヨーコと小野妹子が同一人物だと思っていたし、コンタクトレンズをしているのにメガネを探すし…」「メガネを額の上にあげたまま、メガネがないといつも探してしまう」――冷蔵庫ネタが多いのは、たまたま女性スタッフが多かったためだけど、しばらくトンチンカン自慢の話に花が咲いた▼後で男性陣にも聞くと、「なぜか赤信号は“進め”だと思い込んで交差点に入ったことがあった。たまたま歩行者も車もいなかったから何もなかったけど、気がついて冷や汗をかいた。頭の神経がショートしたとしか思えなかった」などと、これは笑えない経験談だけど…▼どうやら誰でも心当たりがあるトンチンカン。そんな話は、子供も大人もあたたかい笑顔にしてくれる。11月8日は「立冬」。
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