2019年11月29日号掲載 11月8日、立冬の日、近所の方から「大根菜っ葉がとってもよく育ちましたから、いかがですか」とおすそ分けのお電話をいただいた。

11月8日、立冬の日、近所の方から「大根菜っ葉がとってもよく育ちましたから、いかがですか」とおすそ分けのお電話をいただいた。「3、4年前の大根菜っ葉の散歩道を思い出して…」わざわざ連絡してくれたという。ありがたさに恐縮しながら、一方で菜っ葉のみそ汁や、大好きな菜っ葉と油揚げのみじん切りのしょう油炒めなんかを想像して喜びながら、さっそく頂戴したのだった…▼――(生まれ育った秋田の農家、囲炉裏の)まわりに縄で編んだ大根がずらりと下がっている…。大根はとても貴重な野菜で、葉の部分は軒先に干して寒風にさらし、茶色にカラカラになっても水に戻せば汁の実にもなり、長期にわたる保存食材になったし、実の部分は、麹(こうじ)で漬けるちょうどニシン漬けのような鉈(なた)漬けや、タクアンなどの漬け物になる。タクアンにするのに囲炉裏のまわりに干された大根は、囲炉裏の煙でいぶされて自然と燻製化され、名物の「いぶりガッコ」の風味が付いたのではないかと思う(2016年12月2日号散歩道より)――▼思えば、40、50年前まで札幌や江別では、団地のベランダにさえ大根がずらりと干された。そんな初冬の風物詩だった風景も今はもう見られない。うららかな小春のこの季節…子供たちは北風に向かって大声で叫びながら遊んだ。もうすぐ雪が積もる…。